一度完結したものに新たに生命を吹き込むことで、建築は再生される。

石橋 清志 (イシバシ キヨシ)

1974年大阪工業大学建築学科卒業、(株)今西建築デザインルーム入社、85年石橋清志建築設計事務所開設、89年 (株))石橋清志建築設計事務所設立。82年賞空間デザイン賞佳作、90年デュポンコーリアンデザインコンクール入賞、96年近畿ニューオフィス推進賞入賞、97年INAXデザインコンテスト入賞、2003年大阪都市景観建築賞大阪府知事賞関西大学大学院工学研究科建築学専攻修了、04~15年木原千利設計工房、16年乗松得博設計事務所開設、17年チルチンびと住宅建築賞 若手建築家部門 特別賞受賞。趣味はテニス・ライブでのジャズ演奏。

過去に手掛けた建築においては、時代の機能ニーズに応じ、新たな要素を付加することがある。一度完結したものに新たに生命を吹き込むことで、建築は再生される。自らの過去の作品に対し、その表現に対する嗜好が変化することは事実である。しかし、その精神性を否定することはない。これと同様に、歴史の中でさまざまな思考や精神に基づいて創造されてきた建築物についても、その時代において情熱をもって創られたものに関しては、それを否定することはない。

ザウスで設計を手がけた施工例

設計例

「ある画家のアトリエ」
南に正対した2階建てのアトリエとギャラリーでもある玄関、「くの字」に折れ曲がる畳の間の配置。

一人の画家が、キャンバスの向こうに、そして自分に向き合い、一つの絵画を生み出し、鑑賞する場所。
そこは、静けさや、緊張感を纏った場所。
そこに、劇的な何かは必要ない。ここでしか生み出されない、特別な光や気配が存在する。このアトリエは、そんな場所であるべきだと思った。

和泉山脈を源として大阪湾へと流れる河川を見下ろす場所にある。
画家のアトリエ併用住居である。
元々この地にあった木立の中に建ったかのような、そんな佇まいになればいい。

木立の中、緩やかに登りながら蛇行する小径を、陽の光を浴び成長する緑に目を奪われては、立ち止まり、また進んで行くと、深い軒の先、格子戸越しに、画家の作品が飾られた壁が見えてくる。そこは、柔らかい色調の大谷石が敷き詰められ、地窓の先には竪格子の塀で囲われた庭へと視線が抜ける。

畳の間。そこで人は、腰を下ろす。先ほど歩きながら目にした緑を、ここでは、開口を抑えた室内から目にする。高木は幹のみしか見えない。芽吹く新芽、色付く葉、揺れる枝葉、見えない先を想像する。川の音に気付く。雨風で掻き消される程の音だが、雨の降った翌日の朝、そのことに気付かされる。

上流からの湿った風と朝の清々しい光を取り入れる開口、軒と格子が直射光を遮る東西のハイサイドライト、障子を立てこんだ南の吐き出し窓、それぞれの開口が、性質の異なる柔らかい光を制作の場に注ぐ。ここは、常に変わらない環境を与える場所ではない。壁で隔てた外の様子を感じ、筆を置く、そしてまた塗り重ねる。

確かに変化する日常の中に何かを捉え、表現する画家は、その変わるけれども変わらない、雲の動き、水音、緑の濃淡、一日の陽の移ろいを感じながら、またキャンバスに向き合う。

「okabe邸」
エントランス前

立地条件を最大限有効に活かすため、敷地境界に沿ってコの字型に建物を配し、はなれに向かって大開口及び中央パティオを設けた。これにより、周囲からプライバシーを守りつつ開放感のある健康的な住宅となっている。また、壁から屋根を浮かせ開口を設けたことで、四方から光が差し込み、隣地の竹林を絵のように織り込むことに成功している。

「okabe邸」
アウトドアバス

サービスエリア:東京都 神奈川県 埼玉県 千葉県 群馬県 大阪府 京都府(南部) 兵庫県(中南部) 奈良県 和歌山県 滋賀県(南部) 三重県(一部)