帝塚山の狭小住宅・大阪

この狭小住宅について

敷地約21.8坪、建築面積約8.7坪の狭小住宅。建て替えることにより、厳しくなった規制が適用され、面積が今の建物より小さくなってしまう。そこで、空間のつながり、視線の変化、タテとヨコ方向への抜け感、余白スペースの活用など、建築家のデザイン力に期待してザウスへ来店。

周囲は建て込んでいるが、風通しを良く、明るく開放感があること。セキュリティーを高める。クルマ1台分の駐車スペースの確保。隣地の桜の樹を借景にしたいなどの要望にも応えられる建築家探しがスタート。紹介されたatelier thuの設計スタイルに共感し、プランニングを依頼。

提案された間取りは、1階に水回り、2階LDK、3階に個室と書斎スペース。敷地には建物自体が屋根となるクルマ1台分の駐車スペースが設けられた。建築面積約8.7坪で木造地上3階建て。道路との境界から80cmほど入ったところに敷地幅に合わせて高さ2mほどの壁を立て、門のような役割をもたせてシャッターを設置、セキュリティーを強化。また、建物全体を大きく見せる効果もある。建物の外壁はシルバー色のガルバリウム鋼板だが、前面の壁は、塗り壁で柔らかい印象を与えていて、植え込みの緑もよく映える。ポストや宅配ボックスも壁に埋め込まれている。

‌壁にある門扉をあけると玄関までのアプローチが現れる。5mほど進むと箱型の建物の一部を台形型に3階までくり抜いた吹抜け部分に玄関がある。この吹抜けが南からの光を室内まで届ける役割を果たす。

玄関を入ると上階に向かう階段の反対側に、洗面洗濯室と浴室がある。洗面洗濯室の扉の前がガラス張りで、玄関ポーチと同じ仕上げになっているため、明るいだけでなく、室内ながらも中庭と繋がっている趣のある空間になっている。洗面台は階段と高さが揃えられて、中庭を通って繋がっているように見え、玄関ホール、中庭、階段室、洗面室が繋がっているような感覚で広がりを感じさせる工夫がされている。

階段を上がった2階はLDK。リビングはダイニングとキッチンより床面が上にあるスキップフロアを採用し、視線のタテ方向への変化を生み、広がりを感じせているだけでなく、階段2段分の差をベンチとして利用している。限られたスペースで座る場所の確保に効果的なアイデア。キッチンからは外部空間を挟んでリビングが見えるため、こちらも広がりを感じることができる。キッチンには造り付けの収納棚と合わせて、パントリーもあり、収納量をアップさせている。

3階は3つの個室スペースに加え、吹抜けに面した明るい書斎も。吹抜けのおかげで室内に外部空間があるような感覚になり、空間が広く感じられるとともに光と風を部屋の奥まで届ける役割を各階で果たしている。

厳しくなった現在の規制が適用され、建替えると以前の住まいより小さくなってしまうという条件の中、経験と想像力を遺憾なく発揮した建築家のプランニング力、小さくなってしまうが建築家の腕前を信じて任せた建築主の決断力がうまく噛み合い実現した狭小住宅となった。

建築概要

構造・規模	木造・地上3階建て
敷地面積	72.2m² (約21.8坪)
建築面積	28.7m² (約8.7坪)
延床面積	88.4m² (約26.7坪/ガレージ含む)
設計	atelier thu
施工	株式会社ウッドワン関西