つい先日のこと、日ごろからお世話になっている業者さんたちと慰安旅行に行ってきました。
1泊目は草津温泉、2泊目は東京泊で少々強行軍ではありましたが、楽しい旅でした。
今回も例によって、隙間を見つけては建築巡りを。
まずは草津温泉にて。
吉村順三設計の『草津音楽の森国際コンサートホール』。
草津は音楽で有名な街で、毎年国際的な音楽祭が行われますが、その会場となるのがこちら。
大屋根とトップライトが印象的な外観。
この日は閉館時間を過ぎていて中を見られなかったのですが、帰宅されるであろう職員の方が『明日の朝なら中も見て頂けますよ』と言ってくださったので、翌朝リベンジ。
トップライトのところに電動ブラインドがあるのですが、残念ながら故障していて動きませんでした。
ドイツ製で部品もなく修理ができないそうです・・・。
とはいえ、魅力ある空間であることに変わりはありません。
写真ではわかりづらいですが、正面の開口部からは『音楽の森』のごとく、木々が借景に。
音の問題もありますので、山間にあるからこそできる空間かもしれません。
多目的に使用されるこの部屋の椅子も吉村順三デザイン。
吉村順三は八ヶ岳のコンサートホールも手掛けていますし、自邸の別荘は軽井沢の森の中にあります。
山に魅せられた建築家なのかもしれませんね。
さて、所は変わり横浜へ。
目指すは『神奈川県立音楽堂・図書館』。
前川國男設計。
1954年の竣工から60年が経つ、公立施設としては日本初の音楽専用ホールです。
『敗戦後という時代にこそ、音楽を楽しみ、明日への力を養う場所が最も必要である』という当時の神奈川県知事、内山岩太郎の構想によりできあがった音楽堂併設の図書館。
いつも建物の見学の際は、あらかじめ連絡をしてから伺うのですが、この日は急に行くことになったのでぶっつけ本番でした。
にも関わらず、職員の方がきちんと応対くださいました。(原則、事前連絡要です!)
まずはホワイエ。
戦後10年足らずで完成したとは思えない光であふれる心地よい空間。
打ち放しに目がいってしまいますが、気になるのは床仕上げ。
テラゾー仕上げ。砥ぐ出し仕上げといわれます。
コンクリートやセメントに種石をまぜ、人の手やグラインダーで砥いでゆきます。
昔の駅やデパートの床に良く使われていました。ただ多くの手間がかかることから現在は使われることは非常に稀です。
職人さんも激減しています。建築家の中にも研ぎ出しをやりたいという人が多くいます。が、予算のこと、職人さんのことを考えるとなかなか難しい・・・。ジレンマですね。
そしてホール内部。
このホールの音響は当時『東洋一』と言われ、いまでも評価が高いそうです。
一般市民が使用する場所は立派なつくりですが、戦後という時節柄、舞台裏は切り詰めてつくられているので、なかなか大変だそうです。
何億とするヴァイオリンのストラディバリウスを持ちながら、ロングドレスを着て、狭く急な階段を上り下りする演者を見ていると胃が痛いと言っておられました(笑)。
最近この時代の音楽ホールを良く訪ねるのですが、皆さん本当に親切に案内してくださります。
いずれも古さゆえに使い勝手の問題はあるようですが、『愛される建築』であることは間違いありません。
最後に一番気に入った写真を。